「YGらしさ」の考察 パート③ ~人はなぜ「サバイバル番組」にハマるのか~
YGが野心的に売り出した12人のBOY達がデビューして早1年!
一方で言われ続けた「YGらしくない」という指摘。
じゃあ、なにが「YGらしさ」なのか?
前々回のパート①は「ヤンサのルーツと実力派イメージ」に
前回のパート②では「BIGBANG」の影響について考察してみました。
そして今回は、「WINNER & iKON ~ポストBIGBANGの尽きぬ悩み~」と題して、「BIGBANG」の後継者としてデビューしたWINNER&iKONの2組が「YGらしさ」に苦悩した様子について考察しようと思ったのですが…下書きを書いてみると「はじめに」の部分で語りたいことが多くなってしまいました笑
なので今回の「パート③」では、「はじめに」のテーマだった「なぜ人はサバイバル番組にハマるのか?」をテーマに考察を深め、次回以降にWINNER&iKONの考察をしていきたいと思っています。
目次
1.なぜ人は「サバイバル」にハマるのか?
WINNER、iKONのアイデンティティと言えば「サバイバル番組」出身であること。
何を隠そうBIGBANGもサバイバル番組出身ですし、
その後、サバイバル形式のオーディションで「スーパースター」歌手を生み出すというコンセプトで放送された 『SUPER STAR K』(Mnet)が大ヒットし、
Busker Busker(バスカー・バスカー)*3、
そして忘れてはならないカン・スンユン*4を輩出するなど、一大ムーブメントを起こしました。この『SUPER STAR K』シリーズの大成功により、SBS 『K-POP STAR』シリーズ*5、Mnet 『ボイス・コリア』、MBC 『偉大な誕生』など、様々なオーディション番組が誕生するキッカケとなりました。
そんな状況下でYGはWINNERやiKONをサバイバル番組でデビューさせます。彼らが番組を通じて絶大な人気を獲得して以降、MONSTA X(『NO.MERCY』)や、PENTAGON(『PENTAGON MAKER』)、Stray Kids(『Stray Kids』)、TREASURE(『YG宝石箱』)、ENHYPEN(『I-LAND』)など、数多くのサバイバル番組出身のアイドルグループが登場しました。
また、2016年にMnetが「国民プロデューサー」という概念を持ち込んで野心的に放送した『PRODUCE 101』(I.O.I)は社会現象を巻き起こし、その後には
『PRODUCE 101 SEASON 2』(Wanna One)、
『PRODUCE 48』(IZ*ONE)、
『PRODUCE X 101』(X1)
と4年連続でアイドルグループを選抜するサバイバル番組が編成されるほど、『プデュ』は一時代を築きました。
では、どうしてこんなにサバイバル番組が放送され、人気を博したのか。僕が思うに「サバイバル番組」の利点は、デビューまでの辛く苦しい過程をテレビで見せることで、
「これだけ苦労している子たちには何が何でも成功して欲しい!」
と「ファン心」を効果的に煽ることができる点にあると考えます。「私が見初めた子」を「デビュー」させることで、世の中に「布教」することは「サバイバル番組」にしかできません。また、言葉を選ばずに言えば、
練習生個人が悲惨な境遇であればあるほど「ファン心」は燃え上がります。
例えば『プデュ』はシリーズを通して、「辛い練習生生活を送っている人々を自分たちの手で世に送り出そう!」ということがコンセプトだったので、
悲惨な境遇に置かれているか、もう後がない練習生がたくさんいました。
おそらくデビュー&成功したアイドルで一番デビューが遅かったと思われるジソン氏とか、(PLEDISの売り出し方のひどさで)解散寸前まで追い込まれていたNU’EST、あれだけの歌唱力を持ちながら「個人練習生」だったジェファン、「唯一の日本人」(尺もほとんどもらえなかったけど)として孤軍奮闘していた健太君とかが代表的です*6。
そんな「頑張っている」子たちに誰しもが抱いてしまうような「なんとか私たちがあの子たちを成功させることができないのか…?」という、本能にも似た僕たちの思いを最大限利用して「ファン層」を手っ取り早く作ることができる…
それこそが「サバイバル番組」が放送される理由です。
よくK-POPのアイドルヲタクはMnetを燃やしたがりますが、そんな「本能」にも似た気持ちを利用されるからこそ、あんなにMnetを憎んでいるのに我々は「サバイバル番組」をつい見てしまい、まんまと沼にはまってしまうのではないか…、そう僕は思えてなりません。
2.勝者は「K-POPの未来」 ~『WIN:Who Is Next?』のテーマを探る~
では、そんな「頑張っている姿」を評価されてサバイバル番組でデビューした彼らには何が求められたのか?今回は『WIN:Who Is Next?』の特異性について考察を加え、何がWINNER(そしてiKONにも)に求められたのかを考えてから、次回のテーマ「WINNER & iKON ~ポストBIGBANGの尽きぬ悩み~」を考えていけたらと思います。
『WIN:Who Is Next?』の放送は2013年。BIGBANGや2PMといった人気グループだってサバイバル番組で選ばれたアイドルでしたが、それを差し引いても『WIN:Who Is Next?』ほどの大きな注目を集めたアイドルのサバイバル番組は初めてでした。
もちろん先発のオーディション番組『SUPER STAR K』や『K-POP STAR』で広く顔を知られたスンユン&スンフンの存在もかなり大きかったのですが、なによりも
「BIGBANGの後継者」を視聴者の手で選ぶというコンセプトの破格さ
によって注目されたといっても過言ではありません。
BIGBANGはこの前年(2012年)、後期BIGBANGのイメージを固めたといえる『FANTASTIC BABY』が収録されたEP『ALIVE』を発表し、絶大な人気を獲得していました。
また、当時YG所属だったPSY氏も『江南スタイル』の大ヒットで一躍ワールドスターに躍り出るなど、音楽シーンにおけるYGの存在感はそれ以前とは比較にならないほど大きくなっていました。
一言で言えば当時の「K-POP」の象徴とも言うべき存在が、BIGBANGやPSY氏、そしてYGだったのです。
つまり、『WIN:Who Is Next?』とは、単にYGの次期アイドルを選ぶだけで無く、彼らに「K-POPの未来」を託すという非常に重いテーマを持った番組だったと言えます。
ゆえに、アイドルファンだけではなく、多くの視聴者に期待を受けた「K-POPの未来」には「失敗」が許されませんでした。
「Team A(WINNER)」、「Team B(iKON)」は2組ともデビューしたあかつきには「アーティスト性」を確かに備えた、広く一般ピーポーに聴かれるような楽曲をヒットさせなくてはならない…。
そういった「大ヒットしてこそ一人前」のような「YGらしさ」がこうして生まれたのです。
3.いまいちハネない2グループ ~「まとめに」~
さて、今回のパート③のまとめに入りたいと思います。今回は、なぜ人は「サバイバル番組」にハマってしまうのかについて考察を深めたのですが、その理由として僕は「頑張っている子を何とかして助けてやれないのか?」、そして、「この子たちの良さを布教したい!」というヲタクの気持ちを最大限に利用して爆発的な人気を獲得できるからという一つの答えを導きだしました。
そして、『WIN:Who Is Next?』の勝者(もっというとYGのサバイバルの勝者)には「大ヒットしてこそ一人前」という認識が新しい「YGらしさ」として生まれたのではという考察をしてみました。
それを踏まえたうえで、WINNERとiKONの話に戻りたいと思います。
WINNERとiKONは爆発的な番組の人気でデビュー時には絶大な人気を獲得しました。特にWINNERは現在でも「デビュー最短で音楽番組1位を獲得した」という記録(デビュー4日)を持っているくらいです。
しかし、デビュー後のWINNERとiKONは(誤解を恐れずに言えば)「スランプ」を経験します。あきれるほど遅いカムバックや、ライブスケジュールの多さなど、様々な要因はありましたが、何よりも「いまいち曲がヒットしない」という大きなジレンマに彼らは悩まされることになります。彼らは一体何に苦労したのか?どうやってそれを克服していったのか?
次回は「トップグループ」にまで成長したWINNER、iKONがどのような悩みを抱えていたのかについて考察を加えていけたらと思います。
駄文・長文失礼いたしました。ご指摘等ありましたらコメント欄に寄せて頂けたら幸いです。
(END/4451 Words)
*1:
ここの有名な脱落者がHighlight(旧 BEAST)のユン・ドゥジュンで、「ナムチンドル」(彼氏のようなアイドル)の代名詞的存在として現在でも高い人気があります。
*2:その後『応答せよ1997』や『ショッピング王ルイ』などのドラマに数多く出演し、現在では歌手としてより俳優として有名になりました
*3:
『桜エンディング』(벚꽃 엔딩)で有名な3人組バンドで、現在でもボーカルを務めたチャン・ボムジュン氏は非常に大衆人気の高いアーティストです
*4:
スンユンが生放送で『本能的に』(본능적으로)という曲を歌ったステージは未だに有名です
*5:
『SUPER STAR K』シリーズと並ぶ有名オーディション番組で、スンフンはこの番組でトップ4に進出して一躍有名になりました。YG出身歌手だと他にはAKMU(楽童ミュージシャン)やイ・ハイ嬢がこの番組の出身者です。
またTREASUREのイェダムは『K-POP STAR 2』(2012年放送)を出演当時10歳で準優勝を果たした後にYGへ練習生として入社しました。イェダムの年齢に比べて練習生期間が極端に長いのはこのためです。
*6:逆に早熟な子や、天才系の子は「生意気」だと叩かれたりもしました。デフィやサムエルの叩かれようは凄まじかったです…