こうくんと「K-POP」と。

雑食ナムジャドル好きがあれこれ好き勝手書いた文章置き場です笑

「YGらしさ」の考察 パート④ ~WINNER & iKON 、「ポストBIGBANG」の尽きぬ悩み~

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YGが野心的に売り出した12人のBOY達がデビューして早1年!

一方で言われ続けた「YGらしくない」という指摘。 

じゃあ、なにが「YGらしさ」なのか?

パート①では「ヤンサのルーツと実力派イメージ」

パート②では「BIGBANG」の影響、

 

パート③では「なぜサバイバル番組に人はハマるのか?」について考察をしてみました。

 

そして今回の「パート④」では、「WINNER & iKON ~ポストBIGBANGの尽きぬ悩み~」と題して、「BIGBANG」の後継者としてデビューしたWINNER&iKONの2組が「YGらしさ」に苦悩した様子をテーマに考察を深めていこうと思います。

 

目次

1.「前期BIGBANG」 と 「後期BIGBANG」

 

 前回でも軽く触れましたが、BIGBANGは『FANTASTIC BABY』を基点に追求する音楽性や、音楽の「楽しまれ方」がガラリと変化したグループです。2011年のBIGBANGは諸々の事情もあって長い空白期を送ったため、再びトップグループの座に舞い戻るべく大きなインパクトを与えるカムバをする必要がありました。

 奇しくもBIGBANGはこの時期を前後して「ライブ」に活動の軸足を移しつつあり、個人的にはここで「ライブバンド」として一発「盛り上がれる曲」を作ろうという話になったのではと思います。『LIES』や『HARU HARU』は名曲ですが、それでも『FANTASTIC BABY』や『BANG BANG BANG』のノリノリ感に勝るものはありません。そして、勝手に体が動いてしまいそうなほど強烈なEDMサウンドをバックに、みんなで一緒になって盛り上がれる「楽しい」グループのイメージをBIGBANGは獲得しました。こうして、YGが擁する唯一無二のトップグループ「BIGBANG」のパブリックイメージが「前期BIGBANG」の持つ「叙情的」なイメージ*1と、「後期BIGBANG」の持つ「楽しく陽気」パリピ御用達」的なイメージに分かれることになります。

 その過程で、「ポストBIGBANG」としての期待を一身に背負うことになったWINNERとiKON。彼らもまたBIGBANGのように「大ヒット曲を生み出すトップグループ」に成長することが求められました。これを踏まえた上で、今回はWINNERとiKONの辿ってきた歴史を紐解いていきたいと思います。

 

2.「Team A(WINNER)」 の苦悩 

2-1.デビューから空白期が続くWINNER

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『WINNER 2014 S/S』団体ティーザー写真
(2014年8月12日 リリース)

 まずヤンサは『WIN』で「デビューメンバー決定後、即デビュー」と話していましたが、実際はそこから1年近い時が経った2014年8月にデビューすることになります*2


  そしてハンビンとバビが作ったデビュー曲『Empty(공허해)』は瞬く間にヒットし、大成功の内にデビューアルバム活動を終えたのですが…、なんとここからWINNERは1年半もの空白期間を送ります。この間にもミノは『SHOW ME THE MONEY 4』で準優勝したり、スンユンがドラマにカメオ出演したりと、全く活動が無かった訳ではありませんでした。しかし、それ以外の時間はほぼ「日本でのコンサート」か「アルバム制作」に費やされ、後者に至っては1年以上まったく音沙汰の無い状態が続きます。そんな空白期を破って2016年にリリースされたのがEP『EXIT:E』でした。このアルバムがWINNERにとって大きな転機を与えることになります。

2-2.「楽しく陽気な曲」を求められたWINNER

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『EXIT:E』団体ティーザー写真
(2016年2月1日)

 そんな転機の2016年、WINNERは『EXIT』というタイトルのミニアルバムを4枚発売し、最終的に1枚のフルアルバムをリリースする『EXIT MOMENT』プロジェクトを打ち出します。その『EXIT MOMENT』プロジェクトの1枚目として発売されたのが、現在はWINNERを脱退してバンドで活躍を続けるナム・テヒョン(ナムテ)がメインプロデュ―スを担当した『EXIT:E』でした。


 YGはヤンサ自身が曲のクオリティを厳しくチェック&ゴーサインを出さなければカムバできない会社*3なので、曲自体のクオリティは高かったのですが…、このアルバムに色濃く残るナムテの「バンド志向」、「インディーズ的な感性」はお世辞にも「大衆の心を掴む」までには至らず、結果としてファン以外の「一般ピーポー」からの人気を十分に獲得できないまま、活動を終えることになります。

 これが他のグループなら「次のアルバムがあるさ」となりますが…、YGにはBIGBANG、2NE1と偉大な先輩たちが通ってきた道のように「一般ピーポーにも聴かれてこそYG!」という「YGらしさ」が存在していました。


 一般ピーポーにとってWINNERは「ポストBIGBANG」であり、当時の「後期BIGBANG」のイメージは「楽しくて陽気な音楽」―、それを求めた一般ピーポーにとって、ナムテの曲は「暗すぎる」曲として受け止められ、「大ヒット」することなく活動を終えてしまいます。この結果、誰もが認めるアーティスト性を放ちながらも、「ナムテ&ナムテの音楽」「YGとWINNERの目指す方向性(=一般ピーポーにも受けるアーティスト)」の間にあった「ズレ」が『EXIT:E』の発売によって明らかになります。

 その後、ツアーやアルバム制作を続けていたこの年の11月に、ナムテは体調不良を理由にWINNERを脱退することになります。

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FATE NUMBER FOR』
(2017年4月4日 リリース)

そして紆余曲折あった末にようやくリリースされたスンユンプロデュースのシングルFATE NUMBER FOR』は文字通り大ヒットを記録します。


 『REALLY REALLY』が大ヒットを飛ばしたこと、そして『FATE NUMBER FOR』と「4人組」を全面に打ち出したカムバが大成功に終わったことから、結果として最初からのファン以外(つまり一般ピーポー)には、「WINNER=4人組」のイメージが完全に定着します。その後の活躍は皆さんのご存知の通りです。

2-3.それでもキーマンは「ナムテ」

 

 それでもナムテ抜きに今日のWINNERは語れません。たとえ一般ピーポーには「WINNERは4人組」と認識されても、WINNERの音楽が「楽しく陽気な美大生感がプンプンする4人によるオシャレなパリピ御用達」の強烈なイメージを持たれていたとしてもです。ナムテがWINNER活動期でほぼ唯一メインプロデュースを担った『EXIT:E』で展開されたナムテの感性と、ナムテ脱退後にスンユンがメインプロデュースを担当した『FATE NUMBER FOR』の感性は、素人目に見ても違いが一目瞭然でした。おそらくこれだけの「音楽性」の違いが2人の間にあったとするなら、ナムテはスンユン色の強い「楽しく陽気」な音楽をメインに据える「路線変更」にゴーサインを出す可能性はほぼゼロに近かったのではと思います。ナムテが今もWINNERの一員だったとしたら、おそらく「後期BIGBANG」の持つ「楽しく陽気」なイメージを色濃く漂わせる『REALLY REALLY』のような曲は生まれなかったでしょう。あくまで「体調不良」が脱退の理由なので真相は闇の中ですが、最終的にナムテは脱退後、自分のバンド「South Club」を結成しており、現在もナムテの才能を存分に発揮したアーティスティックな楽曲を次々と生み出しています。

2-4.WINNERが「トップグループ」になった理由

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『Remember』団体ティーザー写真
(2020年4月9日 リリース)

 WINNERがトップグループにのし上がった曲が『REALLY REALLY』なことは、誰もが認める事実です。しかし、「4人組」のWINNERだったからこそ『REALLY REALLY』がリリースできたのもまた事実だと個人的には思います。それだけナムテの脱退を境にWINNERの音楽性は明確に変わり、WINNERは「後期BIGBANG」の「楽しく陽気」のイメージを受け継いで現在も愛されるグループにのし上がっていきました。

 このような「出来事」が起きた理由は、「5人組」のWINNERに「カン・スンユン」と「ナム・テヒョン」という2つの異なる感性を持った才能豊かなプロデュース能力を持つ人材が同時に存在していたことにあります。スンユンの持つ感性とナムテの持つ感性がミックスすることを期待して、YGは「Team A」を作ったのは言うまでもありません。しかし、「メガヒットしてこそ一人前」の「YGらしさ」「ポストBIGBANG」のイメージで見られたWINNERの特異性が複雑に絡み合った結果、「ナムテの作る音楽」は曲のクオリティの善し悪しにかかわらず、「ヒットしない曲」のレッテルを貼られてしまいます。かくして「路線変更」が断行され、何の因果かナムテはそのタイミングで脱退し、その後、WINNERはメガヒット曲を世に送り出しました。

 これを「偶然」の一言で済ますのはあまりにも不適切だと思います。YGはアーティスト性が強い事務所ではありますが、それでも「売れること」を目指してグループを企画し、デビューさせていることは疑いようのない事実。WINNERがトップグループになったのは、売れるための「路線変更」が大成功を収めたからこそです。そして、その「路線変更」に大きく影響を与えたのが「YGらしさ」、特に「後期BIGBANG」の持つ「楽しく陽気なYG」のイメージが大きく作用したからだと僕は考えます。

2-5.「4人組WINNER」は「自然」だった


 また、「後期BIGBANG」のような「楽しく陽気」なイメージを「自然」にパフォーマンスできたのも「4人組のWINNER」が成功した大きなポイントでした。すでに『SHOW ME THE MONEY 4』で準優勝し、人気バラエティー番組『新西遊記にレギュラー出演を果たすなど、一躍人気者になったミノ氏の活躍によって、WINNERの知名度は瞬く間に上昇します


度重なるバラエティー番組の出演を通じてWINNERのメンバーは「陽気」で「親しみやすい」のに「オシャレ」で「センス爆発」という、WINNER独特の「親しみやすさ」イメージを一般ピーポーに植え付けることに成功します。その結果、「楽しく陽気」なパフォーマンスが「普段の彼ら」のイメージの延長線上にあるものとして「自然」に受けいれられ、多くの人の支持を集めることに繋がりました。この結果、もとより評価されていた4人のアーティスト性が広く認知され、WINNERはナムドル屈指の人気グループに成長します。この「自然さ」もまた、グループが成功する大きな要因。この「自然さ」の話がTeam B(iKON)」の話にも関わってきます。

3.「Team B (iKON)」の苦悩 

3-1.グループの「核」、ハンビン&バビ

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バンタン @ 国際連合本部 総会議場
(2021年9月20日

芸能会社がグループをデビューさせる時に、「特定のメンバーの才能やカリスマ」ありきでグループを企画することが往々にしてあります。例えばMAMAMOOがフィイン嬢&ファサ嬢の2人を軸にして企画されたのは有名な話。今をときめくバンタンも、超有能リーダー(英語ペラペラ&IQ148)キムナムジュンがいなければ確実に「ワールドスター」にはなってはいなかったでしょう。BLACKPINKやNCTのように英語話者が複数人存在しないバンタンにおいて唯一の英語話者であるナムさんの役割は極めて大きく、今もなお「グループの核」として世界を股にかけながら膨大なスケジュールをこなしています。

 このように「特定のメンバーの才能やカリスマ」を軸にして企画されたグループは数多いのですが、その中でもiKONほど「特定のメンバーありき&依存」が強かったグループを僕は知りません*4。それほどまでにTeam B (iKON)は「ハンビン」、そして「バビ」の徹底的な影響の元にあったグループだと僕は感じます。ヤンサをもってして「一番ヒップホップな子」と呼ばれ、デビュー前にもかかわらず『SHOW ME THE MONEY 3』優勝を果たしたバビ、そしてヤンサ自身も「未来のG-DRAGON」として育てた秘蔵っ子のハンビンは、文字通り「グループの核」でした。特にiKONはハンビンによる強いリーダーシップの元、ハンビンプロデュースの楽曲をリリースし、バビの強烈な個性を軸にしたパフォーマンスを繰り広げていたがゆえに、余計に「ハンビン&バビ」の存在感が大きくクローズアップされた印象があります*5その結果、2人への依存が強くなり、特にメインプロデュース&パフォーマンスの方向性をたった一人で決めていたハンビンへの負担は想像を絶するものがありました*6そして、この「負担の大きさ」が後のiKONの歩みに暗い影を落とす大きな原因となってしまいます。*7

3-2.長い「空白期」の末の失敗

 iKONもWINNERと同様に「ポストBIGBANG」としての活躍を大きく期待されたグループでした。もう一度繰り返しますが、ここでの「BIGBANG」のイメージは「後期BIGBANG」の「楽しく陽気」なイメージ。メガヒットを目指してiKONは「楽しく陽気」なイメージを打ち出しつつ、バビ特有の「ヒップホップ」感をアクセントにしながら優れた楽曲を制作し続けてきました。

 
 そして2015年、『MY TYPE(취향저격)』『RHYTHM TA』といった楽曲群でセンセーショナルにデビューしたiKONは瞬く間に人気グループになります。 

 しかし、あまりにも長い空白期が彼らの活躍にブレーキをかけることになります。この時期のiKONは日本を中心としたライブ活動にスケジュールを全振りしており、本国カムバは遅々として進みませんでした*8

 そうした中、2017年5月にリリースされたのがシングル『NEW KIDS:BEGIN』。これが「ヒット」の基準でもある「音源」の成績どころか、「ファンダム」火力の基準でもある「アルバムセールス」も落ち込んでしまう結果になります。それもそのはず、実はiKONにとって音楽番組での活動を伴うカムバとしては1年半ぶりいくらセンセーショナルなデビューを飾っても、「1年半」の空白期は新人グループには致命的でした。結果的にこのカムバは失敗に終わり、iKONもまたWINNERのような「路線変更」を余儀なくされるのです。

3-3「パリピ御用達の楽しく陽気なiKON」を捨てる決断

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『RETURN』
(2018年1月25日 リリース)

 この「路線変更」を余儀なくされたとき、ハンビンはかなり悩んだことでしょう。偶然にもWINNERは「楽しく陽気」な『REALLY REALLY』で大ヒットを飛ばしている最中。このまま「後期BIGBANG」スタイルを貫き「楽しく陽気」な音楽をメインにするか、はたまた違う音楽にするのか―、悩んだ末にハンビンが出した答えが叙情性を全面に押し出した「前期BIGBANG」への回帰。名盤『RETURN』と名曲『LOVE SCENARIO(사랑을 했다)』の誕生です。

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アユクデ2019正月編でのiKON

 この「路線変更」を考察する上で、手掛かりとなるのが2019年正月に出演したアユクデの写真です。この写真で彼らは圧倒的な「陰キャ」ぶりで全世界のアイドルファンたちに衝撃を与えます。誤解を恐れずに言いますが、WINNERは圧倒的陽キャだったからこそ、「楽しく陽気な音楽」を自然にパフォーマンスできていた事実があります。それに対してiKONは圧倒的に「陰キャ」のグループ*9であり、「楽しく陽気な音楽」ができないわけではないけど、圧倒的に「陽キャ」の強みがあったWINNERと比較すればパフォーマンスの「自然さ」は不足していました。


  圧倒的「陽キャ」が自然にパフォーマンスした結果の「大ヒット」を目の当たりにしたハンビンは、直感的に「後期BIGBANG」の「楽しく陽気な音楽」では勝負できないと悟ったたのでしょう。自分たちの強みは何か?、あるいは、自分たちに合った音楽とは何か?…、悩みに悩んだ末の決断が叙情性を全面に押し出した「前期BIGBANG」への回帰だったのです。ローテンポで強烈なボーカルも強い言葉を使った歌詞もなく、ただ純粋に淡々と「恋をした」2人の「軌跡」に焦点を当てた『LOVE SCENARIO(사랑을 했다)』は、曲としての完成度もさることながら、「耳に残る歌詞とメロディー」で多くの人の支持を集め、文字通り「メガヒット」。音源チャートで年間1位を取り*10、その後の高速カムバも続けざまに成功させ、小学生からの絶大な支持から「小統領」*11とも呼ばれるなど、iKONは全国民的な人気を獲得します。長い空白期の果てに彼らはついに「メガヒット曲」を生み出し、「一般ピーポーにも聴かれてこそYG!」という「YGらしさ」の呪縛に打ち勝ったのです。しかし―、残念ながらその栄光は長く続かなかったのです…。

3-4.「ハンビン依存」と「無知」が招いた悲劇

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ハンビンのTwitterに唯一残るiKON時代の写真
(2018年4月25日 アップロード)

 ご存知の通りハンビンは明確な「違法行為」を犯したためにiKONを脱退し、YGとの契約も解除されました。楽曲面でもパフォーマンス面でもグループの「核」でもあり「顔」だったハンビンを失った影響は非常に大きく、一気にiKONはグループとしての勢いは失速し、現在もかつての人気を取り戻したとは言えない状況が続いています。

 しかし、これがハンビン一人の問題で済む問題なのかと言えば「NO」と僕は答えます。違法行為を犯したハンビンを擁護することはできませんが、「違法行為」を犯したくなるほどハンビンが「追い詰められていた」事実もまた否定できません。『WIN』放送時、ハンビンはこんな発言をしていました。

アメリカから来たバビヒョンもいるし済州島から来たジナニヒョンもいるし。ジュネとドンヒョギは学校も休んでずっと練習してるから、そんな人たちを負けさせる訳にはいかないんです。

 この発言をしたハンビンも当時17歳。いつデビューできるか分からない状況で練習生生活を送り、深夜まで曲作りに励み、ダンスの振り付けまで全て指示する…、17歳の男性がひとりで抱える「責任」の量ではありませんでした。繰り返すようですが、iKONは「ハンビン依存」が極度に進んでいたグループ。過度に「ハンビンありき」で事務所がグループを企画した結果、グループ運営の舵取りはほぼハンビンに委ねられ、事務所とメンバー、ファン、何よりも「一般ピーポー」の為にハンビンは馬車馬のように働きました。もちろんハンビンの犯してしまった「罪」は擁護のしようがありません。しかし、彼が「何かに頼りたくなる」まで精神をすり減らしていたのは紛れもない事実でした。

 また、あくまでも個人の考えですが、ハンビン自身が違法行為を犯してしまった当時、「その行為がどれほど悪いことなのか」を正確に理解できていたのかは正直疑わしい部分があります。ハンビンが芸能界に足を踏み入れたのは小学生の頃。以来、中学校すら満足に通うことなく*12練習生生活を送ってきました。学校で学ぶのは「五教科」のような「勉強」だけではなく、「社会性」だったり「協調性」だったり「コミュニケーションスキル」だったり…、これらを全部ひっくるめた人間力だったりします。

今も凶悪犯罪を犯した被告人に「死刑」を下す時に使われる「永山基準」というものがあり、そこに名を残す永山則夫*13という人がいます。彼は逮捕後『無知の涙』という本を出版し、長きに渡る自己分析の末、「貧困ゆえの無知さによって犯罪を犯してしまった」と自分の「罪」に対する「答え」を出しました。これはハンビンにも当てはまることだと僕は思います。あくまで個人の感想ですが、「あの行為」に手を出してしまったのは「あまりにも無知(もっというと世間知らず)」ゆえ、色々な意味で「善悪」の基準「どれほど人に迷惑をかけてしまうのか」が分からず、「強く何かにすがりたかった」がゆえの行動だったのと僕は考えます。『ミクメ』での脱走事件を見るに、プロデューサーとしてもラッパーとしてもパフォーマーとしても何もかも優秀だったハンビンの弱点は「メンタルの弱さ」と「人間力の乏しさ」でした。リーダーとして「絶対やってはいけない」行為だった「脱走」を(いくら気が立っていたとはいえ)『ミクメ』撮影中にやってしまった事実は否定できません。それでもハンビンはTeam B全員でデビューするため「人間力」の成長を犠牲にしながら、「芸能人」としてのスキルを伸ばすことに人生を捧げました。その「犠牲」の代償があまりにも大きな形で、彼が誰よりも愛した「iKON」に帰ってきてしまったのは、K-POP史上稀に見る「悲劇の物語」だったのではないか…今となってはそう思わざるを得ません。

4.まとめ~新しい「YGらしさ」へ~

 いい意味でも悪い意味でも、WINNERとiKONは「YGらしさ」の呪縛に振り回されながら活動を続けてきました。「一般ピーポー相手にメガヒットしてこそ一人前」の「YGらしさ」を崩さなかったからこそ、『REALLY REALLY』、『LOVE SCENARIO(사랑을 했다)』の2大メガヒット曲は誕生し、多くのファンを獲得できたのは否定できない事実です。一方で、「売れる」ための「路線変更」が断行されたり、特定のメンバーありきでグループを企画し、過度に特定メンバーへの依存が強くした結果、最終的に彼自身が身を持ち崩してしまう最悪の事態を招きました。これもまた「YGらしさ」ゆえの結果です。

 そしてハンビンのニュースが決定的となりヤンサはYGを辞職することになります。報道によって「ハンビンが違法行為を犯した時点で事態を把握していたこと」、「それを隠していたこと」が明らかになったからです。このハンビンがやってしまったことも、ヤンサがやってしまったことも僕は「擁護」するつもりはありません。しかし、裏を返せば「ハンビンが違法行為を犯してしまった2016年時点」で他ならぬヤンサは「YGらしさ」ゆえのグループ運営の問題点を理解していたのと思われます。だからこそ、ヤンサは次世代のYGグループに「TREASURE」を選択したと僕は考えます。

 「TREASURE」は最後にヤンサ自身が直接デビューメンバーを選抜したグループ。そこで次回は「YGらしさ」最終回としてTREASUREについて考察を加え、新たなる「YGらしさ」へ彼らが踏み出している様子について触れていきます。

1万字を超える駄文・長文失礼いたしました。ご指摘等ありましたらコメント欄に寄せて頂けたら幸いです。

 

(END/10644 Words)

 

*1:もっと踏み込んだ言い方をすれ「暗くて」「陰キャ的なイメージですね…

*2:

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M COUNTDOWN
(2014年8月21日 放送回)

その結果、当時『HER』が大ヒットしていたBlock Bカムバが重なり、ミノは親友のジコ氏ピオちゃんと再開することになります。

*3:裏を返せば流行りのジャンルではなくても曲が良ければヤンサの鶴の一声でカムバが決まるシステムでした。このためナムテの感性が色濃く反映されながらも『EXIT:E』はリリースされることになります。

*4:Block Bもその傾向が強いグループですがiKONほどではありませんでした

*5:例えばバンタンを見ると分かりますが、楽曲プロデュースではむしろSUGA氏がリードする部分が大きく、パフォーマンス面でもホビさんとジミンちゃんの持つ役割がかなりの部分を占めます。このように同じグループの間で「役割分担」が高度なレベルで行えていた点がバンタンの大きな強みだったと言えます

*6:5人組時代のWINNERも実は「役割分担」がかなり上手く行われていたグループでした。楽曲面ではスンユン、ナムテ、ミノの3人がリードを取りますが、パフォーマンス面では圧倒的にスンフンがリードを取っていました。そしてジヌさんが上手く縁の下の力持ち的な役目を担っていたことにより、結果として「役割分担」が高度なレベルで行えていたグループでした。

*7:個人的に「縁の下の力持ち」や「メンタルサポート」の役目を積極的にこなし、空中分解寸前だったTeam Bをギリギリの線で救ってくれたユニョンは紛れもなくiKONの恩人ですが、彼の力をもってしてもハンビンの負担&依存が軽減されることはありませんでした…

*8:実はこの長い空白期の間にハンビンはあの事件を引き起こしてしまいます。今となっては真相は闇の中ですが、本国カムバが遅れたのはこうした裏事情があったからなのではと個人的には思います。

*9:もちろん彼らの性格的な理由もあるでしょうが、「同級生同士」からアイドル同士の友人関係がスタートすることが多い中でiKONはユニョン以外高校を卒業しておらず、このために「友人」を作るハードルが他グループよりも高くなってしまった側面があります。

*10:ナムドルが年間1位を取ったのはBIGBANGiKONだけです。ソロを含めるとジコ氏もいます。

*11:「小学生」の「大統領」の略称。

*12:韓国では中学校も「中退」制度が存在しています。ハンビンは中学校を中退後「中卒認定試験」を受験し、中卒資格を得ています。日本では似たような試験に日本だと「高検」(高等学校卒業程度認定試験)があります

*13:現在は死刑執行済み。悲惨な家庭環境の中で満足に学校生活を送ることができず、最終的に連続殺人事件を引き起こしてしまった人物です。