「YGらしさ」の考察 パート② ~BIGBANGの影響と「YGらしさ」~

YGが野心的に売り出した12人のBOY達がデビューして早1年!
一方で言われ続けた「YGらしくない」という指摘。
じゃあ、なにが「YGらしさ」なのか?
それを、パート①「ヤンサのルーツと実力派イメージの形成」、パート②「BIGBANGの登場」、パート③「WINNER & iKON ~ポストBIGBANGの尽きぬ悩み~」、パート④「ヤンサのいないYGとTREASURE」(いずれも仮題)の4つに分けて考察してみたいと思います!
前回のパート①は「ヤンサのルーツと実力派イメージ」について考察しました!

BIGBANG*1
今回のパート②ではK-POPで唯一無二の存在にしてYGの象徴、「BIGBANG」の影響について考察を深めていきたいと思います。
目次
1.「嘘」から始まった「アイドル時代」 とYGの「大衆性」
I'm so sorry but I love you 다 거짓말
(I'm so sorry but I love you 全部嘘なんだ)
이야 몰랐어 이제야 알았어
(今になってようやく分かったんだ)
네가 필요해
(君が必要だってことに)
I'm so sorry but I love you 날카로운 말
(I'm so sorry but I love you 胸に刺さる鋭い言葉)
홧김에 나도 모르게
(腹いせになって思わず)
널 떠나보냈지만
(君を突き放してしまったんだ)
BIGBANG(빅뱅)“LIES”(거짓말)
Release:2007.8.16
Lyric&Compose :G-DRAGON
Arrange:Brave Brothers(용감한 형제)
BIGBANGのデビューは2006年。その翌年に、この不朽の名曲『LIES』(거짓말)がメガヒットします。
これにより、BIGBANGは一躍トップグループの仲間入りを果たすと同時に、
韓国の大衆音楽界に「アイドル時代」の到来を告げます*2





『BANG BANG BANG』(뱅뱅뱅)活動期に
完全体で「ユ・ヒヨルのスケッチブック」に出演したときの
MCユ・ヒヨルさんの紹介コメント(2015年6月5日)
そして『LIES』のメガヒットがセンセーショナルだったのは、
この超メガヒット曲を(当時19歳の!)ジヨンさん(G-DRAGON)が作詞作曲したこと。
B1A4(ジニョン)、Block B(ZICO)、SEVENTEEN(ウジ)、PENTAGON(フイ)、Stray Kids(バンチャン、チャンビン、ハン)、(G)-IDLE(ソヨン嬢)、AB6IX(デフィ)などなど、 近年のアイドルにとって「自分たちで曲を作ること」はもはや珍しいことではありません。
しかし、何事も偉大なのは「先駆者」!
「用意された曲」に合わせて「踊る」だけ*3という「アイドル」のイメージを根底から覆したのがジヨンさんであり、BIGBANGだったのです。
このように「アイドル」の先入観を破り、優れた「アーティスト性」を武器にしたBIGBANGは「アイドル」としてファンの心を掴むと同時に、「アーティスト」としてファン以外の多くに人にも「楽曲の良さ」から支持を受けることになります。
特に2015年に発表した『BANG BANG BANG』(뱅뱅뱅) は2015年のMelon 音源チャート年間1位を達成するほどメガヒットしました。一般的にヨジャドルよりもナムジャドルは音源に弱く、表現を選ばずに言えば「一般ピーポー」に受けない傾向が強い*4のですが、この曲は異例中の異例。BIGBANGがいかに「一般ピーポー」に支持されていたのかがよく分かります。
こうして、別にアイドルのファンじゃなくとも、「BIGBANGの曲なら…!」と多くの人に「聴きたい!」と思わせる力をBIGBANGはその活動を通して磨き上げてきました。その流れを受けて、YGは新ボーイズグループ、つまり「ポストBIGBANG」のWINNER、iKONにも「自己プロデュース」という命題を掲げさせます。
理由はひとつ、
それは「アーティスト性」の確保のためです。
BIGBANGはジヨンさんをはじめとするメンバーのカリスマ的とも言える自己プロデュース能力、言い換えれば、『僕たちは「アイドル」でもあり、「アーティスト」でもある、と感じさせる力』によってトップグループに成長しました。
だからこそ「ポストBIGBANG」を掲げるグループに「アーティスト性」が無いなんてYG的には御法度だった。
奇しくも、その新しいアーティストたちも「GDと同じように自己プロデュースやってる系」(スンユン、ミノ、BOBBY、ハンビン などなど…)でした。彼らの綺羅星の如く光り輝く才能をベースに、特にナムジャドルをローンチするときに、「この子たちは自分たちで曲作ってるんですよ!」と「アーティスト性」をバチバチに打ち出すことで、YGは「アーティスト性」イメージと「大衆性」の確保に勤しみ、「トップグループ」へと育てようとする…、そういった意味での「YGらしさ」がこうして生まれていったのです*5。
2.「スンちゃん」を考える ~「カリスマ」イメージの「光」と「闇」~

スンちゃん(2015年)
まさか今みたいになるなんて夢にも思わなかった頃。
誤解を恐れず言うなら、僕はスンちゃんという人間が好きでした。根っからのエンターテイナーでしたし、「人を喜ばせたい」という思いは本物だったと思うからです。
しかし、スンちゃんが取り返しのつかないことを起こし、芸能界から去った今になって考えてみると、彼は「個人のメンバーの突出した才能とカリスマ性からくるアーティスト性をプンプンと漂わせていた」BIGBANGではないグループ*6に所属していなかった方が明るい未来*7が待っていたのでは無いかと感じる部分が多々あります。
繰り返すようですが、スンちゃんは根っからの「エンターテイナー」であり、生粋の「アイドル」でした。わずか16歳(満年齢)でデビューした彼は、歌もダンスもトークも何でもこなす「オールマイティー」な人間でした。エンターテイナーとしては稀に見る才能の持ち主と言えます。特に日本語のトークスキルは下手な日本の芸人さんよりも高く、たまにテレビで彼の姿を見たときにはいつも「すごいなぁ…」と思っていたほどです。
しかし、幸か不幸か、彼の所属していたBIGBANGというグループは「K-POP最強グループ」の名をほしいままにした超人気グループであったと同時に、徹底的に「各メンバーの突出した才能とそこからくるカリスマ性」が人気の中心であり、「アーティスト性」の源になっていたグループでした。
スンちゃんに与えられた才能が「どんなことでもそつなくこなせてしまう万能エンターテイナー」だったのに対し、BIGBANGのメンバーとして求められた力は「何かに突出した才能」や「カリスマ性」だったのです。
スンちゃんは素晴らしいエンターテイナーで、天性の「アイドル」だったけど、「カリスマ」と呼ぶにはあまりにも身近すぎて器用すぎた…。これは彼の元から持っていたキャラクターによるものだと思います。
どれだけエンターテイナーとしての才能を発揮し「アイドル」として実際に成功したとしてとも、世間的には「BIGBANG」のメンバーとして見られ、「カリスマ」的なイメージを要求され、他のメンバーと比較され続ける…。
その結果、彼は他の4人とは違う「事業」の方向に舵を切り、自分のイメージをブランディングしようとしたのではないでしょうか。その結果は以上の通りです。残念極まりません。何回も言うようですが僕はスンちゃんが好きでした。しかし、その他のグループでは「オールマイティキャラ」や「エース」として活躍できたであろうスンちゃんの持つ才能は、不幸なことに所属していた「BIGBANG」というグループ、そして「YG所属歌手」という点に限り、十分に発揮することができなかったのではと個人的には思います。
BIGBANGは全活動期を通してジヨンさんを筆頭とする「カリスマ」的な才能を発揮するメンバーの「アーティスト性」を武器にして大衆にアピールし、トップグループに成長しました。一方で、その類いまれな「アーティスト性」と「カリスマ性」がグループ、そして事務所全体への「イメージ」として定着してしまったことが、「オールマイティー」だったスンちゃんの…、言葉を選ばずに言うなら「没落」した一つの理由だと考察します。「カリスマ」は見る者聴く者を圧倒させ絶大な人気を得るという「光」の側面もあれば、自分のキャラクターとのギャップで身を持ち崩してしまうという「闇」の側面もあるのではと感じます。良くも悪くも「カリスマ性」がつきまとっていたのが「YG」所属歌手(特にナムジャドルが)なのではないか…?スンちゃんの今を見るとそう思えてなりません。
3.まとめ ~パート③に続く~
今回はYGはおろか、アイドル業界全体に影響を与えた「BIGBANG」の「光」と「闇」を同時に見ることで、どのように「YGらしさ」、あるいは「BIGBANGらしさ」が生まれていったのかについて考察を深めてみました。
次回(パート③)のテーマは「WINNER & iKON ~ポストBIGBANGの尽きぬ悩み~」
ポスト「BIGBANG」として、なにがなんでも成功しなければ!という宿命を若くして背負ってしまった少年たちの苦悩とその「答え」、変わりゆく「YGらしさ」について考えていけたらと思います。
駄文・長文失礼いたしました。ご指摘等ありましたらコメント欄に寄せて頂けたら幸いです。
(END/5070 Words)
*1:今は4人ですがあえて今回はスンちゃんもいる5人の写真を貼ります
*2:
正確に言うと『LIES』の側面も大きいですが、それ以上にWonder Girlsの『Tell Me』の影響が強かったものと思われます。絶妙にマネしたくなる位の難易度のダンスに覚えやすいメロディー、中毒性の高い「Tell Me Tell Me ....」というリフレインは当時の韓国に社会現象的な流行を巻き起こしました。アイドル、特に今のヨジャドルの人気は彼女たちとこの曲を作った餅ゴリ社長の功績がかなり大きいです。
*3:特に1990年代~2000年代初頭のダンス歌手はリップシンクのステージを披露することが珍しくなかったので、「ダンス歌手」(アイドル含む)は全員「口パク」みたいな風潮があったのは事実です。
※参考
1990年代中盤~2000年代にかなりの人気を博したダンス歌手グループ、쿨(COOL)の『浜辺の恋人』(해변의 여인)という楽曲のパフォーマンス映像。下でずっと回ってる映画フィルムみたいなマークは「リップシンク」のステージという印でした。ちなみにCOOLのメインボーカルのお二人は非常に歌唱力の高いお方です。
*4:逆にヨジャドルは音源に強く、代表的なヒット曲に
A pink 『No No No』(2013年 年間3位)
GFRIEND『Rough(시간을 달려서)』(2015年 年間2位)
TWICE『CHEER UP』(2016年 年間1位)
MOMOLAND『BBoom BBoom』(2018年 年間4位)
などがあり、いずれもその年を代表するヒット曲です
*5:ヨジャドルが「安定と信頼のTEDDYさんプロデュース」(BLACKPINK)を全面に打ち出すのも、「大衆性」の確保や「YGサウンド」を維持しようとする姿勢によるものだと思われます
*6:

テヤンさんの横にいるのがヒョンスン(2006年)
ちなみにBEASTのデビューは3年後の2009年
ちなみにスンちゃんは元BEASTのヒョンスンと一緒に練習生生活を送り、追加メンバーでBIGBANGとしてデビューした有名なエピソードがあります。しかし、結果論ですが、スンちゃんはBEAST方面のグループの方が元のキャラクターを活かせたのではと個人的には思います。逆にヒョンスンみたいな不思議ちゃん&パフォーマンスの鬼みたいな人こそ、もしかしたらBEASTよりもBIGBANGの方が向いていたのでは…と、あくまで個人の意見ですがそう感じてしまいます…。
*7:ここではあの事件に関わる余地すら無かった&今も人気アイドルとして高い人気を維持できていたのでは…?、という意味でこの言葉を使用します。彼がBIGBANGのメンバーとして選ばれたこと、そしてトップスターになったこと自体を否定する意図はありません。